西埼玉、関東大会へ──。5年生以下の新チームで戦う、ノーブルホームカップ第27回関東学童軟式野球秋季大会の埼玉県予選大会は9月13日に開幕。地区代表40チームが参加し、県内の各球場で熱戦が繰り広げられ、同21日には県営大宮公園野球場で準決勝と決勝が行われた。決勝では西埼玉少年野球(飯能)が熊谷ウイングス(熊谷)を下し、2年ぶり3回目の優勝を決めた。西埼玉は11月22、23日に水戸市で行われる関東大会に出場する。
(写真&文=鈴木秀樹)
※記録は編集部、本塁打はすべてランニング
■決勝
◇9月21日◇大宮公園野球場
▽第3試合
熊谷ウイングス(熊谷)
016101=9
34301 X=11
西埼玉少年野球(飯能)
【熊】荒木、江黒、橋本-須藤
【西】武内、渡辺、鈴木、渡辺、武内-横田来、清水
本塁打/武内(西)
三塁打/須藤、沼上、秋庭(熊)武内、清水、中村(西)
二塁打/橋本、江黒(熊)清水、荒井(西)
【評】1回裏、西埼玉は先頭の清水洋が右越え二塁打を放つと、次打者の内野ゴロが敵失を誘い無死一、三塁。盗塁で二、三塁とし、三番・武内瑛汰主将が左中間を破る三塁打を放ち2点を先制。さらに會田健真の犠飛で3点目を挙げた。西埼玉は2回にも清水、荒井若獅の連打、中村湊の左中間三塁打などで4得点。追う熊谷は2回表に1点を返すと、3回には一死から須藤旭が右越え三塁打、四番・秋庭真博の申告敬遠に続き大谷夏輝、江黒隼が連続適時打、さらに一死満塁から沼上晴雅が走者一掃の左越え三塁打を放つなど、打者一巡の猛攻で一挙6点を挙げて試合を振り出しに。それでも、西埼玉は直後の3回裏に清水、荒井の連打に続き武内主将が左越えの3ラン本塁打を放って再び熊谷を突き放し、5回にも1点を追加、追撃する熊谷を振り切って2年ぶりの優勝を決めた。(了)
優勝
=2年ぶり3回目
にしさいたま
西埼玉少年野球
[飯能市]
全国経験組を中心に攻守充実
最終日の午前中、準決勝の第1試合でレッドファイターズ(春日部)に5対2で勝利し、11対0で決着した、熊谷と上藤沢ライオンズ(入間)との第2試合を見ていた西埼玉・綿貫康監督がつぶやいた。
「熊谷さんは打ちますねぇ…」
ただでさえ、投手のやりくりを考えると、点の取り合いになりやすい、ダブルヘッダーの2試合目。試合は予想通りの打撃戦となった。
注目の初回、先発の武内瑛汰主将が熊谷打線をゼロで抑えた西埼玉が、その裏に先制。2回表には、熊谷に1点を返され、なお一死二、三塁と同点のピンチを迎えたが、武内主将が三振で2つ目のアウトを奪うと、次打者の放った、抜ければ同点という飛球を、中堅手の鈴木聖絆が「微妙と思ったけど、思い切って行きました」と飛び込んでキャッチ。「突っ込んでいってよかった!」と窮地を脱したのだった。
2回表二死二、三塁、抜ければ同点の当たりを中堅手の鈴木(手前)が好捕(上)。その裏、一死一、二塁から中村が左中間に2点三塁打(下)
2回裏、西埼玉はさらに4点を追加。完全に西埼玉の流れと思われたが、3回表にまさかの6失点で同点に。「あの(2回までの)リードで“勝った”とは、思っていませんでしたよ」という西埼玉・綿貫監督の言葉通りの展開となった。
それでも、「ウチもみんな、よく振ってきましたから。3週間ごとに、バットのグリップを巻き替えなきゃいけないくらいには、やってきた。選手たちも、打ち負けない自信はあったんじゃないでしょうか」──。
試合を決めたのは、準決勝でも2本の本塁打を放ってチームを勝利に導いた、武内主将のひと振りだった。3回裏無死、清水洋、荒井若獅の連打に続き、相手左翼手の頭上を大きく越える3点本塁打。「ホームランを狙っていたわけじゃないけど、必ず走者をかえすつもりで、責任感を持って打席に入りました」とニッコリ笑った。
3回裏一死、清水が3安打目の右前打(上)。その裏一死一塁から荒井が左前打(下)
綿貫監督が「とにかく、優しい子。自分が投げているときに味方がエラーしても、まったく嫌な顔をせず、必ず『気にするな』と声を掛ける。周りのみんなが“彼のためなら”と思ってくれるような、そんな選手なんです」と評する好漢。「そのおかげで、チームワークもすごくいい」
最終6回表、1点を返され、なおも二死三塁。4回途中から渡辺桜生、鈴木、再び渡辺とつないできたマウンドに再び上がり、内野ゴロで試合を締めくくった武内主将の周りに、西埼玉ナインがワッと集まった。飛び跳ねて優勝を喜び合う西埼玉ナイン。一番の笑顔を見せているのは、その真ん中にいるキャプテン自身だった。
3回裏、竹内主将が左越え3ラン(上)。ダイヤモンド一周後も笑顔が弾ける(下)
今夏には、6年生中心のチームで、全日本学童マクドナルド・トーナメントに初出場を果たした西埼玉。2回戦で戦いを終えた全国大会では、9人の5年生もベンチ入りしていた。
その中で、武内主将は2試合ともに途中出場していた。上位進出を期待されながら、2戦目で涙をのんだ大舞台の戦いを、こう振り返る。
「6年生の先輩たちの強さは、自分も一緒に戦っていたから、分かっていたつもりだったんですけど…それでも、負けてしまった。一つのアウトの大切さっていうか、たとえば2アウト目をとっても、少しの瞬間も油断しちゃいけないんだ、ということを学んだ気がするんです」
この県新人戦の最終日は、2試合で3本塁打、さらにマウンドでも躍動と、文字通りチームを優勝へと導いた大黒柱が見せた、ここ一番での気迫は、新潟での苦い経験が生きていたのだろう。
「このチームも、6年生と変わらないくらい、いいチームになっていると思います。みんなが気持ちをひとつにして戦えるんです」と武内主将。埼玉を制し、11月の関東新人戦に挑む。
「まだ時間があるので、練習して、もっと強くなりたい。勝つ自信はあります!」
もちろん、目指すは先輩たちに続く、来夏の全国舞台。優しくも頼れるキャプテンは、パッと笑顔に戻りうなずいて、チームメートの待つ輪の中に帰っていった。
準優勝
くまがや
熊谷ウイングス
[熊谷市]
爆発力も破壊力も!脅威の打線
準決勝では三番の須藤旭が4打数3安打、四番・秋庭真博が2打数2安打1四球、五番・大谷夏輝も2打数2安打1四球。高打率のクリーンアップ3人だけでなく、どこからでも長打が飛び出す上に、よくつながる打線は脅威だ。
決勝でも2回までの6点差を3回表、一気に追いつく爆発力をみせ、西埼玉に迫ったが、悲願の金メダルには届かなかった。
3回表一死、三番・須藤が反撃の口火となる右越え三塁打(上)。2点を返してなお一死満塁の好機に、沼上が走者一掃の左越え三塁打を放つ(下)
「1、2回の失点は痛かったですね。さすがにあれだけ、長打を打たれると…」と倉田賢一監督。「ウチもみんなよく打って、同点に追いついてくれましたが、届きませんでしたね。西埼玉さんは強かった」。荒木蓮人主将は「最終回に点が取れなかったのは、悔しいです」と振り返った。
学童用の特設フェンスがなく、外野はフリー。広いフィールドでの守備は、守る外野手にも厳しいが、西埼玉同様、こちらも中堅の大谷夏輝が幾度も好捕でチームを救った。
3回裏、中堅手の大谷が美技で守りを終わらせ、笑顔でべンチへ(上)。4回裏を無失点で切り抜けたナイン(下)
「とはいえ、内野をはじめ、守備はまだまだです」と倉田監督。「走塁と守備ですね。課題ははっきりしたので、来年に向けて、きっちり練習しないと」とうなずいた。
全日本学童でメダル獲得の実績もある熊谷グリーンタウンなど、地元にも強豪が多い熊谷市。「そうなんです。まず地元で勝たないと。ただ、来年もなかなか厳しそうなんですよねぇ」と倉田監督が苦笑する。
とはいえ、「この県大会での戦いも、選手たちを成長させてくれています。この経験を生かしたいですね」と指揮官。荒木主将は「みんなが笑顔で、最後まであきらめないチーム。もっとレベルを上げて、全国大会まで行けるチームになりたい。守備も打力も」と力を込める。
けれんみのない戦いぶりが魅力的な彼らが、これからどう変わってゆくのか。一回り成長を遂げての再会を、楽しみに待ちたい。
■準決勝
◇9月21日◇大宮公園野球場
▽第1試合
レッドファイターズ(春日部)
000020=2
02102 X=5
西埼玉少年野球(飯能)
【レ】鈴木大希-相場
【西】渡辺、鈴木-清水
本塁打/武内2、會田(西)
三塁打/高(レ)
二塁打/荒井、鈴木、清水(西)
第3位
レッドファイターズ
[春日部市]
▽レッドファイターズ・小林阿斗監督「春日部と合併する前、庄和町のとき以来、30年ぶりの県大会でした。目標は(最終日に)県営球場に来ることだったので、達成はできたかな。ただ、チームとしては、もう少しできることはあったのかなと、悔しさもありますね」
▽同・鈴木大希主将「3位はうれしいけど、負けてしまって少し悔しい。次は勝てるように努力します。守備もバッティングも、全部」
▽第2試合
熊谷ウイングス(熊谷)
2360=11
0000=0
上藤沢ライオンズ(入間)
【熊】江黒、大谷-須藤
【上】手島、河野-河野、小川
三塁打/須藤2、秋庭(熊)
二塁打/山崎、橋本(熊)
第3位
かみふじさわ
上藤沢ライオンズ
[入間市]
▽上藤沢ライオンズ・星修二監督「小学校単位のチーム。指導者たちも見たことない景色を見せてもらいました。ここまで連れてきてくれた、子どもたち、親たちに感謝です。ただ、このままじゃ終わりませんよ。来年ももちろん県大会に来ます!」
▽同・河野新主将「チームとして新しい記録をつくれたのはうれしいです(過去最高は県ベスト16)。自信はついたけど、過信しないように。来年はすべての大会で優勝できるよう、チームみんなで頑張っていきたいと思います」